はじめに

 国民の安全・安心な生活や社会・経済活動を支えている社会資本の老朽化が深刻な問題となっており、国をはじめ地方自治体や企業、関連する業界団体や学会等が土木・建築構造物の維持管理体制の確立に向けた取り組みに力を入れています。他方で、人材や財源の確保、「予防保全」の普及、長期的視野にたった合理的・計画的なマネジメント手法の確立など、残された課題への対応も急務となってきました。
 リニューアルニュースでは調査・診断から補修・補強に至るさまざまなニュースを、インターネットを通じて配信していきます。 後世に良質な土木、建築構造物を残していくための情報を、幅広い角度からタイムリーに取り上げます。



(2015.5.11)

  土木研究所 先端材料研究へ新センター
  土木研究所(魚本健人理事長)は4月1日、高度化・多様化する材料資源分野の研究開発を他の研究機関等と連携して進めていく目的で「先端材料資源研究センター(iMaRRC)」を設立した。魚本理事長がセンター長に就任。今後、大学等で行われる材料の基礎・シーズ研究の成果に対して、現場適用性の観点から工学的評価や改善提案を行うとともに、土木材料に関する基盤的研究を進めることで橋梁や道路など各種土木構造物の耐久性向上やメンテナンス手法に関する研究を支援し、土木構造物の効果的な維持更新や低炭素循環型社会の構築に貢献していく。
 昨今、土木材料分野では高齢化が進む社会インフラへの対応や、低炭素循環型社会形成に向けた研究開発の促進がより強く求められていることに加え、14年度に総合科学技術・イノベーション会議が創設した「戦略的イノベーション創造プログラム(SIP)」の課題の一つに土研も参画する「インフラ維持管理・更新・マネジメント技術」が選定され、同プログラムにおいても先端的材料研究が行われることなどから、新センターを設立した。
 主な研究テーマは①外部研究機関と連携した土木分野における先端的材料の実用化に関する調査研究②土木材料の耐久性向上等の高度化に関する調査研究③建設事業およびその他公共事業由来の廃棄物の有効利用および関連するエネルギー使用の効率化に関する研究④コンクリートや鋼材等汎用土木材料に関する研究。
 ②に関しては、鋼やコンクリート材料のみならずアスファルト、塗料、ゴム、プラスチックなど土木材料全般を対象として耐久性向上等の高度化に向けた研究を行う。暴露試験等を通じた各材料の耐久性の実証的研究、要求性能の設定や検証方法に関する調査も実施する。鋼材やコンクリートなど従来の材料のみの研究では画期的な「ブレークスルー」の実現が難しいことから、新たに開発されつつある多くの先端的材料についても効果的な導入・実用化に向けた研究を積極的に進めていく方針だ。
 ③では、とくに建設・維持管理で発生する廃棄物を資源やエネルギーとして地域で有効利用する「地産地消型」技術開発に取り組む。安全性の確保や環境負荷の低減など全国一律で適用すべき要求水準の提示、地域特性に応じた安全対策や環境保全対策、個別技術のエネルギー効率向上と地域単位でのエネルギー効率向上手法も整備し、多様な地域環境や将来の地域社会の変化にも対応しうる技術の確立を目指す。
 こうした研究を効果的に実施するため、先端材料に関する情報収集の効率化、ノウハウの一元化を進めている。組織としては、関連する従来の研究チーム(新材料、リサイクル、基礎材料等)を統合し、マネジメントできる新組織を構築した。

(2015.2.9)

  熊谷組 可塑性注入材「エコマックス」をプレミックス化
  熊谷組は1月22日、トンネルの覆工背面や各種構造物基礎の下部の空洞等に充填する可塑性注入材「エコマックス」を子会社のファテックと共同でプレミックス化し、「エコマックスTypeP」として製品化したと発表した。25㌔㌘/袋として供給し、現場で所定の水を加えてミキサー(100または200㍑)で混合・攪拌するだけで注入材が得られる。材料はモルタルポンプで圧送して空洞に充填する。20㍍程度の圧送が可能だ。
 同社が07年に開発したエコマックスは、フライアッシュを大量に使用するとともに、特殊増粘剤によりエアの混入を促進した、可塑性・水中不分離性を有するグラウト材。今回、混和剤を粉体化し、小規模施工用に袋詰めした。
 水中分離抵抗性を有するため水の豊富な環境でも施工が可能。材齢28日圧縮強度は3~4N/mm2となる。圧縮強度が同程度の発泡ウレタン(12倍発泡)と比較すると、エコマックスTypePは材料費で2~3割、施工費も含めた施工単価は1割程度安価となる。母材がセメントのため耐久性にもすぐれる。プレミックス材料は工場で製造されるため品質が安定している。
 通常、トンネルの覆工背面の空隙充填などの工事では施工数量が数百~数千㎥と大きくなることが多いため、トンネル坑口など施工現場周辺に材料の製造プラントを設置してアジテーター車で現場まで運搬するか、配管で圧送して空洞に充填することが多い。
 半面、100㎥以下の小規模工事や、特殊な施工条件がある工事などでは注入材として発泡ウレタンが使用されることが多かったが、強度の安定性や耐久性に課題があったほか、材料を手作業で計量して混ぜるので大きな手間がかかっていた。

 

(2015.2.2)

  東京コンクリート診断士会 創立10周年記念し技術セミナー
 東京コンクリート診断士会(小野定会長)は1月27日、東京工大田町イノベーションセンター国際会議室で「設立10周年記念(第18回)技術セミナー」を開いた。冒頭、あいさつに立った小野会長は「当会は社会的地位の向上を主たる目的に05年11月に設立された。そうしたなか、国交省は昨年、社会資本メンテナンスの確立に向けて民間資格の登録制度を創設したのに伴い、JCIが同年末にコンクリート診断士の活用を申請している。今後も社会基盤の維持管理に貢献すべく活動していきたい」と述べ、新たな決意を示した。
 セミナーでは国交省総合政策局の中原淳参事官が「今後の社会資本整備のあり方~特に老朽化対策について」と題して講演し、民間資格の登録創設などを説明。コンクリート診断士の公的認知が高まり、活用が進む効果が期待されると語った。その後、「インフラドックにおける診断士の活用」をテーマにパネルディスカッションを実施。日本診断士会の林静雄会長がコーディネーターとなり、JCI〈コンクリート構造物のインフラドック構築フィージビリティ調査研究委員会〉の大津政康委員長(熊本大学教授)と岡本享久幹事(立命館大学教授)、横沢和夫委員(持続可能な社会基盤研究会)、および東京診断士会の小野会長と田沢雄二郎副会長、峰松敏和事務局長がパネリストをつとめた。同員会は11年にインフラ施設のための予後システムとしてインフラドックを提案。12年から検討に着手し、WG1(有用な検査法の開発)とWG2(検査コースの整備)、WG3(検査員としてコンクリート診断士を活用する制度の検討)を設置して3カ年活動してきた。その成果は、7月30日に東京理科大学森戸記念館で報告する予定だ。WG3の梅沢委員は、コンクリート診断士に求められるのは多能化であり、構造物の知識やマネジメント能力も身につけることが大切だと要望する一方、有資格者を活用するために社会基盤維持管理センター(仮称)の創設を提案し、権限と責任を明確にすることを提案した。

 

 

(2014.12.8)

  非破壊検査2団体 「インフラ調査士」創設
 日本非破壊検査工業会(松村康人理事長)と日本非破壊検査協会(廣瀬壮一会長)は11月28日、道路構造物などの点検技術者を認定する「インフラ調査士」の資格制度を創設したと発表した。国土交通省や地方自治体がインフラ施設の維持管理にあたって、来年4月から国が認定・登録した民間資格の有資格者に点検や診断、一部の補修設計の業務を委託することに対応したもの。初回試験は、道路分野の「橋梁(鋼橋)」「橋梁(コンクリート橋)」「トンネル」「付帯施設」の4区分について来年2月12~14日に講習会および一次試験(学科)、3月5日に二次試験(実務)を行い、今後対応する分野を拡大するとともに、上位グレードとして「インフラ調査管理士」資格も整備する。初回は300人程度の合格者を出したい考えだ。
 国交省は諮問機関の社会資本整備審議会と交通政策審議会が設置した「社会資本メンテナンス戦略小委員会」の昨年12月の答申「今後の社会資本の維持管理・更新のあり方について」などを受け、民間資格の登録制度の設置を準備してきた。11月28日には「公共工事に関する調査及び設計等の品質確保に資する技術者資格登録規程」を官報告示し、登録申請の受け付けを開始している。
 インフラ調査士は、国交省などが民間資格を活用する9分野のうち、まず「道路」分野の全施設を対象に立ち上げ、今後、対応範囲を拡大していく方針。業務は点検のみで、診断は行わない。国交省の資格区分で「担当技術者」に対応し、今後設置するインフラ調査管理士は同「管理技術者」に対応する。受験資格はJIS Z2305(非破壊試験技術者の資格及び認証)に基づき非破壊検査協会が認定している「非破壊検査技術者」や他の非破壊検査関連資格を保有しているか、道路分野の点検・診断業務で3年以上の実務経験を有すること。
 非破壊検査工業会と非破壊検査協会は、来年4月から地方自治体でも道路構造物の5年に1回の近接目視点検が義務化されることから、認定有資格者数を早期に1万~2万人にしたい考えだ。
 28日に開催した記者発表であいさつに立った松村理事長は「4月から全国で大量の技術者が必要とされる見通しとなったことから、今回の資格制度の設立も大急ぎで行うこととなった。しかし、当工業会は非破壊検査協会と連携し、これまでも業界内の人材育成に努めてきた経緯があり、協会の認定資格者は全国で5万人に上る。新資格の設置で、こうした技術者が広く活躍する機会も増えるだろう」と述べた。
 また、廣瀬会長は「主に学術・技術の面から工業会をバックアップしていく。想定されている点検業務は目視が中心ということなので、協会規格のNDIS34128『コンクリート構造物の目視試験方法』なども役立ててもらいたい」とした。

 ・NEXCOと土研など、インフラ常時監視で技術研究組合
 土木研究所(魚本健人理事長)とNEXCO東日本、中日本、西日本を発起人として組合員14者で10月22日に発足した「モニタリングシステム技術研究組合(RAIMS)」(理事長・依田照彦早稲田大学理工学院教授)は2日、東京都千代田区の都市センターホテルで第1回臨時総会を開き、活動を開始した。今後5年程度の活動で、既存の要素技術を組み合わせて道路構造物の常時監視システムの構築を図るとともに、技術やシステムの標準化を進め、地方自治体などがすぐにでも活用できるメニューとして整備することが狙い。組合員は以下の通り▽沖電気工業▽鹿島▽共和電業▽国際航業▽土木研究所▽日本工営▽日本電気▽NEXCO中日本▽同西日本▽同東日本▽能美防災▽日立製作所▽富士通▽前田建設工業。
 総会の冒頭であいさつに立った依田理事長は「老朽化が進むわが国のインフラ構造物の維持管理では、技術者が不足している地方自治体の支援や維持管理コストの縮減といった観点からも、モニタリング技術を現場で活用していくことがきわめて重要だが、現時点では本格的な現場導入には至っていない。今回、各分野でわが国を代表する企業に組合員としてご参加いただいた。わが国のみならず世界のインフラ技術に貢献できるよう力を合わせていきたい」と述べた。
 モニタリングシステムを構成するセンサ計測技術、計測データの収集・伝送などの通信技術、分データの析評価技術等の各技術の研究開発は盛んになってきているが、これまで本格的な現場導入に至ってこなかった背景には、管理者リーズとのマッチングが効果的に行われてこなかったがあるという。
 RAIMSは今後、①管理者ニーズを整理してモニタリングシステムの要求性能を明確化②室内試験や高度解析技術により構造物の劣化機構を検証③センサによる計測技術、計測データの収集・通信技術、収集したデータの分析評価技術を組み合わせたモニタリングシステムを現場実証④モニタリングシステムの基準化・標準化を提案するとともに維持管理レベルに応じたシステムを提案、といった活動を行っていく予定だ。

 

(2014.3.24)

 ・エルガード協会がインフラ維持管理討論
 日本エルガード協会は6日、東京都港区の住友会館・泉ガーデンタワーで技術セミナー2014「これからの我が国の社会資本管理のあり方を考える」を開催した。約100人が参加した。昨年12年12月に開催した技術セミナーが好評だったことを受け、2回目となる今回はより多くの分野からパネリストを揃え、今後のインフラの維持管理について、会場の出席者とともに議論した。
 パネリストは岩波光保東京工業大学大学院教授、加藤絵万港湾空港技術研究所構造研究領域構造研究チームリーダー、葛目和宏国際建設技術研究所社長、西村隆司日経BP社建設局編集委員、丸屋剛大成建設技術センター土木技術研究所部長。福手勤東洋大学教授がファシリティーを務めた。
 福手教授はパネリストの話題提供に先立って問題提起を行い、「オールジャパン」でインフラの維持管理に取り組む気運が高まるなか、国土交通省がトンネルや橋梁について地方自治体に5年に1度の点検を義務付ける方針を固めたことなどを紹介。「一方で、地方自治体からは財政・人員面で対応が難しい、国の規準等も高度すぎる、といった声が聞こえる。今年は『メンテナンス元年』に続く『メンテナンス2年』になるが、かけ声と実情にギャップがある。関係者は『予算はあるので執行しましょう』という姿勢を見せているが、これでは『メンテナンス・バブル』。今日は維持管理の適正な実施に向けた妙案を考えたい」と述べた。
 パネル討論では次のような発言があった(以下、敬称略)。
 岩波 全国に無数にある道路標識はすべてに番号が付されているそうだ。警察に通報する際、住所がわからなくても標識の番号を伝えると所在がわかるという優れた仕組みだ。なぜこうしたことが土木構造物ではできないのか。警察には人の命を預る、治安を守るという高い意識があるからだろう。技術的な問題ではなく、意識の違いだ。
 西村 維持管理の時代といわれながら、公共事業では維持管理の発注量はむしろ減っている。今後増えるのかもしれないが、現状では企業も対応が難しいだろう。
 丸屋 民間構造物については維持管理の仕事をいただいている。建物のオーナーさんや管理者にとって切実な問題だからだ。企業にとってもBCPの問題に直結する。公共施設の維持管理は誰にとって切実なのだろうか。
 福手 社会資本の管理を通してどんな価値やサービスを提供できるか、一般の人にいかに説明し合意を得ていくかが重要になる。
 西村 住民を交えて道路の維持管理等を行う取り組みが出てきているが、自治体がこうした取り組みのある地区に対し、維持管理だけでなく道路拡幅など社会資本整備にあたっても優先的に予算配分を行っている事例がある。この仕組みは、結果からみてもうまく機能している。
 蒔田実顧問(フロア) 地域のまちづくり計画に関わってきた経験からいうと、この10年間ほどで住民の意識は大きく変わっている。実際に住民主導でさまざまな事業が進められている。東京都は公園整備計画において、地域住民が公園の維持管理に積極的に参加してくれるところを優先する方針としている。こうした仕組みを道路管理等に適用していくことも可能だろう。行政、住民ともに意識が高まっており、好機と捉えるべきだ。
 加藤 住民との合意形成と並んで、インフラ構造物が現在どういう状態にあるかといった情報を開示していくことも重要だ。しかし国は昨年実施した港湾構造物の緊急点検の詳細な結果を公開していないし、港湾空港技術研究所でも知ることができないのが実情。マイナス情報の独り歩きを恐れているようだ。
 葛目 非破壊試験でも、いろいろな技術が出てきたのはよいが、メーカーは試験法や試験機器のよい面しかいわない。発注者が採用を検討しても、よく吟味すると適用条件に沿わないことが分かったりする。現状では、ほとんどの非破壊試験法が弱点を抱えており、どういった条件でどのように役立つかを明確に説明し、実績を上げていくことを考えるべき。マイナス情報も開示するところを信用した方がいいな、というのが私の実感だ。
 福手 今後の維持管理のあり方については。
 葛目 リタイアした技術者を活用していくことが必要。こうした技術者には地域の自治会などに顔を出して人間関係を作っていってもらいたい。本当に重要な情報は、人と人とのつながりから得られる。
 西村 土木分野の広報の課題がよく指摘されている。維持管理に関わっている技術者が、仕事の魅力ややりがいをもっと語るべきだ。
 岩波 今後の課題は、議論よりも実行。土木分野では抜け駆けを嫌う風習があるが、むしろ誰かが抜け駆けして風穴を開けてくれることに期待したい。